身内の話を少し。
自分の従兄弟はとある大きな病院でレントゲン技師(診療放射線技師)をしています。

別にその職業を最初から目指していた訳ではなく成り行きでそうなったそうです。学生時代に特にやりたいこともなく、将来どうしようかなと漠然と考えていたところ、たまたま父親がレントゲン技師という資格があると聞き、それでも目指してみるかと本人に言ったそうです。
それを聞いてなんとなくやってみるかと思い、そのまま資格を取ってレントゲン技師になってしまったという変わり種。

仕事は真面目ですが、どちらかというとプライベートのオフタイムにも力を入れて生きていくタイプでスポーツマン、かなりがっしりとした体格の持ち主です。

ところがある時、見るからに健康全開だった彼が、自身が勤めている同じ病院内で入院することになりました。何が起きたかというと病院内で感染症にかかってしまったのです。いわゆる院内感染。

病院にいて病気に感染するというのはなんだか不思議な感じがしますが、これは十分に起こりえることです。もちろん当事者である病院側からすれば、自分たちの施設内で院内感染が発生したと世間に知られてしまえば多大に信用を落とします。

そのため、この彼の件では無料で個室に入院し、全て病院持ちで治療に専念することができました。なお、数週間にわたる治療期間の間に担当していた看護師と仲良くなり、そのまま結婚までしてしまいましたがそれはまた別のお話。

病院や福祉施設内で病気に感染する?

元々、医療機関に限らず人が多く集まる場所では直接・間接にかかわらず他人と接触する機会が非常に増えます。つまり何らかの病原体をもった人が一人でもいた場合、それが多数の人々に感染していく可能性が非常に高くなっていくわけです。

加えて病院というのはそもそも病原体を抱えた人が多数出入りする場所であり、一般的な公共施設に比べても感染症の発生源になる確立が高い場所と言えます。さらに体力的に弱っていて罹患しやすい人々が集まる場所でもあります。

病院というと一見衛生面が整えられ清潔なイメージがありますが、実は施設内の衛生基準については統一された規格というものが存在せず、それぞれ現場の運営に任されているのが現状です。自分も多数の病院を見てきましたが、同じく多数の人が出入りするそのあたりのホテルやレストランのほうが、よっぽど感染予防に気を遣ってるのではないと思わせるような衛生度を考慮してない医療施設をいくつも見てきました。

これは医療機関に限らずその他の福祉施設でも同じです。
体力的に弱った高齢者の多い老人福祉施設では、感染症が広がってしまうと治療も難しく利用者の生命健康に重大な損害が発生します。

そのため何より重要なのは、感染症の発生をあらかじめ予防する環境を整えておくこと。もちろん感染症が発生してからの対応策を準備しておくことも重要です。
ただ最初に書いた事例でもそうですが、施設内で感染症が発生してしまうと信用やイメージというものが一瞬にして崩れ去ってしまいます。

これはビジネス面においても本当に大ダメージ。

利用者のみならず、そこで働くスタッフ達も自身に危険を感じるような職場では全力で働くことができないでしょう。施設内の設備の不備によって病気に感染した場合、スタッフから訴訟をおこされるケースも存在します。
訴訟までいかなくても、スタッフの定着率の低下などビジネスに悪影響を及ぼす弊害があります。

ですので、まずは感染症の発生を未然に防ぐということがなにより大事なのです。

設備で対応することも大事だがまずは基本の施策

4種類の感染経路(飛沫感染・空気感染・接触感染・血液媒介感染)の中の接触感染の例として挙げられるドアノブ。
利用者やスタッフ、業者など不特定多数の人々が出入りする施設では誰しもが触る場所であり、インフルエンザ・ウイルス性胃腸炎(ノロウィルス等)の感染経路の一つとしても名高いポイントです。

海外では、触って感染する可能性があるなら触らなければいいとの発想で下記のような製品が販売されていたりします。

これは一体なんでしょう?
実はドアの下部に取り付け、足でドアを開閉できるようにするものです。

引用:Toepener™ | The World's Best Door-Handle-For-Your-Foot

Toepenerという商品でお値段39.95ドル。日本円に換算して4000円~5000円くらい。
ジョークグッズのようですが大真面目な物です。

ただこの製品は、靴が傷ついたり靴紐が絡まる危険性があったり、ドアが重ければ結構な力が必要になったり、力の弱い高齢者や子どもが使いにくかったりとこれはこれでそのまま使用するには様々な問題があり、即導入というわけにはいかないでしょう。

これ以外にも接触感染を防ぐためには、手を触れる物全て自動ドアのような形で触れずに動くようにすればいいのでは?などと考えたりもしますが、それらを施設に設置するためのコストを計算してみると、導入は不可という結論になってしまう施設がほとんどではないでしょうか。

衛生度を他者に確認してもらう必要性

施設内の衛生環境を設備面から整えることは、感染予防にとって非常に重要です。いざ非常事態がおきた場合の訴訟リスク軽減にもつながります。
しかし、施設内の設備を全て改装しなくてもやるべき対策は他にもあります。

それは手洗いや清掃、換気、咳エチケットを守るなどの本当に基本的な感染予防対策の徹底。特に手や指を経路とする接触感染は、手洗いや拭き掃除を徹底することでかなりの割合で防ぐことが可能です。そしてスタッフの皆様の感染予防に対する意識の向上が何よりも大切だと言えます。
感染予防のための「手洗い」方法

しかしこういった施策をただ決めるだけ決めて「やっています」というだけでは意味がありません。上述したように、現場で自由にしてしまうとそれぞれの独自の解釈で運用されてしまい、やっているはずなのに正しい手順や運用方法が守られてないので結果意味がない、そんな状況が生まれてしまいます。

可能であれば、明確な評価基準を設けてる審査機関に評価してもらい、定期的にちゃんと感染予防のための施策が運用できているのかチェックしてもらえるような環境にしておくべきです。外部から監査されそして評価されることによって、対外的にもこの施設は感染予防に誠実に取り組んでいると証明することが可能となります。

現在、ICSAではこの「施設の感染予防度を第三者的に評価する事業」を行っています。多数の人が出入りする施設を運営している法人・個人事業主の方で、正しく感染予防に取り組んでいることを目に見える形で証明したいと考えているのであれば、是非一度お問合せ下さい。